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藍より滲みでる表現 抜染技法への挑戦

2025.05.20
高校(フロンティア)
PROGRAM

埼玉県羽生市に佇む「武州中島紺屋(ぶしゅうなかじまこうや)」は、天保8年(1837年)の創業以来、250年近くにわたり藍染の技を守り続けてきた老舗の染織工房です。「武州藍」として広く知られるその技法は、単なる色彩の表現にとどまらず、日本の生活文化に深く根ざした精神性と美意識を体現しています。

私たちは今年も、この由緒ある場所で藍染体験の機会を得ました。県認定伝統工芸士である新島さんが快く出迎えてくれました。

藍染体験は、自分だけの模様を創り出す工程から始まります。Tシャツを折り畳み、ねじり、輪ゴムや糸で縛ることで、染料が届かない“防染”の部分が生まれます。この技法は「絞り染め」と呼ばれ、仕上がりに大きく影響を与える非常に重要な工程です。

どのような構図で布を折り、どの位置を縛るかによって模様の出方は劇的に変化します。偶然性と計画性が交差するこの作業には、創造的な発想と観察力が求められます。

今年のフロンティアコースの3年生たちは、新たな試みに挑戦しました。それが「抜染(ばっせん)」という技法です。抜染とは、染め上げた布地の一部を化学的に脱色し、模様や文字を浮かび上がらせる伝統的な染色技法のひとつ。あえて“色を抜く”ことで、藍の深みの中に新たな表現が生まれます。

この技法は、藍の中に意図的に“余白”をつくることで、美しさや意味を引き立たせるという、日本独特の美意識とつながっているとも言えるでしょう。藍染の文化の中でも比較的高度な工程であり、表現の幅を広げる重要な一歩となりました。

さらに、今年はフロンティアコースとしてのオリジナルロゴデザインも完成しました。ロゴが生徒たちの手によって考案され、その中心には日本の伝統文化を象徴する「家紋」をモチーフとした図案が据えられています。そして、その家紋を囲むように描かれているのは、小さく可憐な「カスミソウ(かすみそう)」の花。

カスミソウには、「幸福」「感謝」「親切」「清らかな心」「無邪気」といった花言葉があり、生徒たちが大切にしてきた想いや、フロンティアコースの理念がそのまま表されています。ロゴは単なる“マーク”ではなく、学びと挑戦の積み重ね、そして未来への意志を形にしたシンボルになってほしいと思います。